出典:http://number.bunshun.jp/
前評判から圧倒的なパリーグの優勝候補と目されていた福岡ソフトバンクが、今季もその予想通り、強さを誇っています。
北海道日本ハムが球団史上最多の15連勝を決めてもなお、首位をがっちりキープしています。
なぜソフトバンクはここまでの常勝軍団になれたのか?
万年Bクラスだった南海からダイエーに譲渡された1989年。
本拠地も大阪から福岡に移したものの、1990年代もBクラスのシーズンが続きました。
しかし、1999年に福岡ダイエーになって初めて優勝・日本一を達成すると、翌年も優勝し、パリーグ連覇を達成しました。
1999年に78勝54敗3分で優勝の福岡ダイエーホークス/王貞治監督の5年目のシーズン
ここから、チームは2008年に最下位、2013年に4位というシーズンはありましたが、それ以外はすべてAクラスを達成。
特にここ2年間は連続日本一を達成しています。
福岡ソフトバンクはまずは何と言っても潤沢な資金があります。
しかし、巨人のような大掛かりな補強をしているかというと、けしてそのようなことはありません。
逆指名や自由枠といった制度があった頃のドラフトでは、中央球界の有力選手を続々と獲得し、チームの土台を築き上げました。
▲1991年ドラフト1位入団の若田部健一投手と1992年ドラフト1位大越基選手。入団の当初投手として入団。
▲1993年ドラフト1位入団の小久保裕紀選手
▲1994年ドラフト1位入団の城島健司選手
▲1996年左)ドラフト2位入団の松中信彦選手(中)ドラフト1位入団の城島健司選手(右)ドラフト3位入団の柴原洋選手
1990年代主なドラフト入団選手通算成績
年度 | 選手 | ドラフト | ポジション | 通算成績績 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1991 | 若田部健一 | 1位 | 投手 | 防4.15 | 71勝75敗 | 投1315.0 | 振761 |
1992 | 大越基 | 1位 | 外野手 | 率.291 | 本1 | 点24 | 盗15 |
1993 | 渡辺秀一 | 1位 | 投手 | 防3.89 | 27勝30敗 | 投518.1 | 振345 |
小久保裕紀 | 2位 | 内野手 | 率.273 | 本413 | 点1304 | 盗58 | |
1994 | 城島健司 日米 | 1位 | 捕手 | 率.289 | 本292 | 点1006 | 盗79 |
1995 | 斎藤和巳 | 1位 | 投手 | 防3.33 | 79勝23敗 | 投949.2 | 振846 |
1996 | 井口忠仁 日米 | 1位 | 内野手 | 率.271 | 本292 | 点1203 | 盗224 |
松中信彦 | 2位 | 内野手 | 率.296 | 本352 | 点1168 | 盗28 | |
柴原洋 | 3位 | 外野手 | 率.282 | 本54 | 点463 | 盗85 | |
1997 | 永井智浩 | 1位 | 投手 | 防4.67 | 28勝21敗 | 投439.2 | 振339 |
現在では武田翔太投手、千賀滉大投手、今宮健太選手といった高校出身の若手選手を1軍クラスに育て上げています。
2011年宮崎日大からドラフト1位指名の武田翔太投手
高校出身の選手
年度 | 選手 | ドラフト | ポジション | 通算成績 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2009 | 千賀滉大 | 4位 | 投手 | 防2.21 | 4勝7敗1s20H | 投106.0 | 振135 |
2010 | 今宮健太 | 1位 | 投手 | 率.240 | 本17 | 点144 | 盗33 |
2011 | 武田翔太 | 1位 | 投手 | 防2.71 | 28勝14敗 | 投368.0 | 振329 |
また2軍では今季から2軍専用の最新設備が整った「タマスタ筑後」という球場を設立し、育成環境も整えています。
このように、潤沢な資金を選手の獲得だけでなく、若手の育成も着実に行うことで、チームの戦力層を厚くし、常勝軍団となったのです。
歴代監督のチーム構想が成功したのか?
常勝ソフトバンクのすべては王監督時代からスタートしました。
福岡ドームに本拠地を移転してからと言うもの、日本最大級の広さを持つグラウンドに、選手は四苦八苦しました。
しかし、その広い球場が選手を育て、12球団屈指の強力打線に育て上げていったのです。
派手さがなかったチームも、いつしかその破壊力には圧倒されたものでした。
広い球場は投手も育て上げました。
打線の援護もあり、投手は打線を信じて投げるという相乗効果で、投打ともに強くなっていたのです。
福岡ドームと言う広いフィールド、それに適応しようとする王監督のチーム構想が見事にマッチしたのでしょう。
秋山監督に代わると、主力選手は十分に揃っていたため、若手の育成にも力を注ぎました。
ドラフト外で入団し、スター選手となった秋山監督だけに、若手を育成するという点では手腕を発揮しました。
礎が出来た状態で工藤監督にバトンが渡され、伝統と戦力が上手く継承されている…
これが成功の要因なのでしょう。
歴代監督の通算成績
監督 | 年数 | 試合 | 勝利 | 敗戦 | 引分 | 勝率 | 優勝 | 日本一 |
王貞治 ホークスのみ | 14 | 1913 | 998 | 877 | 38 | .532 | 3 | 2 |
秋山幸二 | 7 | 865 | 456 | 369 | 40 | .553 | 3 | 2 |
工藤公康 2年目前半戦迄 | 2 | 229 | 145 | 75 | 9 | .659 | 1 | 1 |
クライマックスシリーズはあまり強くないのはなぜ?
これだけ無敵を誇る福岡ソフトバンクでも、かつては弱点がありました。
「クライマックスシリーズの呪い」と呼ばれるほど、チームはクライマックスシリーズで結果が残せなったのです。
過去にシーズンは優勝を果たしたものの、クライマックスシリーズで、いわゆる「下剋上」を決めれたのは3度。
2004年から始まったクライマックスシリーズ(当初はプレーオフ)ですが、10度出場して7度も敗退しているのです。
これはチームが短期決戦に弱点があったこと。
また特にシーズンを1位通過した場合、ファイナルステージまで長い調整期間があったことなどが要因として挙げられるでしょう。
しかし、ここ2年はシーズン優勝、さらにクライマックスシリーズを制覇。
日本シリーズも連覇しています。
「クライマックスシリーズの呪い」も過去のものになりつつありますね。
プレーオフ・クライマックスシリーズ導入後の順位
年度 | CS順位 | リーグ順位 | リーグ勝敗 |
---|---|---|---|
2004 | 2位 | 1位 | 77勝52敗4分 |
2005 | 2位 | 1位 | 89勝45敗2分 |
2006 | 3位 | 3位 | 75勝56敗5分 |
2007 | 3位 | 3位 | 73勝66敗5分 |
2008 | — | 6位 | 64勝77敗3分 |
2009 | 3位 | 3位 | 74勝65敗5分 |
2010 | 2位 | 1位 | 76勝63敗5分 |
2011 | 1位 | 1位 | 88勝46敗10分 |
2012 | 2位 | 3位 | 67勝65敗12分 |
2013 | — | 4位 | 73勝69敗2分 |
2014 | 1位 | 1位 | 78勝60敗6分 |
2015 | 1位 | 1位 | 90勝49敗4分 |
2016年ソフトバンク3連覇の可能性はほぼ確定?
福岡ソフトバンクは前半戦だけで30もの貯金を作り、パリーグでは今季も独走体勢を築いていました。
6月には早くもマジックが点灯するのでは…と
その可能性もあるほど、他を圧倒していたのです。
ところで、2005年以降で、前半戦を貯金30以上の首位で折り返したチームといえば、実は2005年の福岡ソフトバンクしかありません。
その年はシーズン89勝を挙げ、リーグ優勝を成し遂げました。
2005年パリーグ前半戦順位
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 |
1 | ソフトバンク | 62 | 29 | 1 | .681 |
2 | ロッテ | 56 | 32 | 2 | .636 |
3 | オリックス | 42 | 45 | 3 | .483 |
4 | 西武 | 44 | 50 | 0 | .468 |
5 | 日本ハム | 37 | 51 | 2 | .420 |
6 | 楽天 | 28 | 61 | 1 | .315 |
2005年パリーグ最終順位
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 |
1 | ソフトバンク | 89 | 45 | 2 | .664 |
2 | ロッテ | 84 | 49 | 3 | .632 |
3 | 西武 | 67 | 69 | 0 | .493 |
4 | オリックス | 62 | 70 | 4 | .470 |
5 | 日本ハム | 62 | 71 | 3 | .466 |
6 | 楽天 | 38 | 97 | 1 | .281 |
2016年パリーグ前半戦順位
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 |
1 | ソフトバンク | 55 | 26 | 5 | .679 |
2 | 日本ハム | 52 | 32 | 1 | .619 |
3 | ロッテ | 48 | 38 | 1 | .558 |
4 | 楽天 | 34 | 47 | 2 | .420 |
5 | 西武 | 36 | 50 | 2 | .419 |
6 | オリックス | 32 | 51 | 0 | .386 |
また2008年の阪神は貯金28で前半戦を折り返したものの、後半戦の失速で2位に終わりました。
過去のソフトバンクのように前半戦で貯金30あれば、十分に優勝できるのではないでしょうか。
ただ、2位以下のチーム、特に今季は北海道日本ハムが該当しますが、大きな貯金を蓄えるようなら、まだまだ分からないのも事実ですね。
後半戦のキーマンは?
北海道日本ハムが怒涛の勢いで首位に迫ってきていますが、それでもまだ独走状態には変わりありません。
後半戦に向けてカギを握るのは、野手ではやはり昨季のトリプルスリー・柳田悠岐選手でしょう。
なかなか打率が3割を超えない上に、本塁打も10本を超えたばかり。
しかし、彼本来のポテンシャルが十分に発揮されれば、打線はより活気付くのは間違いありません。
柳田 悠岐(やなぎた ゆうき)
生年月日 | 1988年10月9日(27歳) |
出身地 | 広島県広島市安佐南区 |
身長 | 188cm |
体重 | 93kg |
ポジション | 外野手 |
投打 | 右投左打 |
プロ入り | 2010年 ドラフト2位 |
成績 | 試86 安90 率.298 本11 点48 盗15 |
2016年7月20日(水)
また投手では若い武田翔太投手、そして右肩の疲労回復のため調整を行っているバンデンハーク投手がキーマンとなるのではないでしょうか。
武田投手は10勝を目前としており、若きエースとして、どこまで勝ち星を積み重ねることができるか。
武田 翔太(たけだ しょうた)
生年月日 | 1993年4月3日(23歳) |
出身地 | 宮崎県宮崎市 |
身長 | 186cm |
体重 | 85kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | 2011年 ドラフト1位 |
成績 | 登17 9勝4敗 投116 振86 防2.95 |
2016年7月20日(水)
またバンデンハーク投手は一時は無敵の投球を繰り広げていただけに、先発陣に戻ってくれば、大きな戦力となるのは確実です。
リック・バンデンハーク
生年月日 | 1985年5月22日(31歳) |
出身地 | オランダ |
身長 | 198cm |
体重 | 105kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | NPB 2015年6月14日〜 |
成績 | 登10 6勝1敗 投66 振64 防3.41 |
2016年7月20日(水)
しかし、福岡ソフトバンクはチーム全体のバランスで強くなってきたチーム。
2軍でも1軍で十分に戦力となりうる人材が揃っているだけに、キーマンは球団の選手全員といっても過言ではないでしょう!