近年のプロ野球は「投高打低」の傾向にあります。
先発では防御率1点台の投手も珍しくありません。
その一方で、打線はというと、3割をマークしている打 者、年間40本以上のホームランを打つ選手というのは減少傾向にあります。
今後、プロ野球の傾向はどうなるのかを考えてみましょう。
投高打低の遍歴
かつて、プロ野球で使用されているボールは、球団ごとに違っていたと言われます。
飛距離が増すボールもあれば、飛びにくいボールもあったようです。
そしていつしか、やたらと飛ぶボールばかりが流行したときもありました。
1990年代から2000年代にかけて、40本以上の本塁打を放った日本人打者といえば、
巨人・松井秀喜選手
福岡ダイエー・松中信彦選手
広島・新井貴浩選手
東北楽天・山崎武司選手
横浜・村田修一選手(球団名は本塁打王を獲得した当時のもの)らがいます。
しかし、2010年代に入り、40本以上の本塁打を放った日本人打者は埼玉西武・中村剛也選手の1人のみ。
2012年にはそんな中村選手ですら、わずか27本塁打で本塁打王に輝いています。
2000年代〜統一球の導入後までの日本人最多本塁打
本塁打 | 選手 | 年度 | 当時球団 |
50本塁打 | 松井 秀喜 | 2002年 | 巨人 |
48本塁打 | 中村 剛也 | 2011年 | 西武 |
46本塁打 | 村田 修一 | 2008年 | 横浜 |
46本塁打 | 中村 紀洋 | 2001年 | 近鉄 |
46本塁打 | 松中 信彦 | 2005年 | ソフトバンク |
44本塁打 | 小久保 裕紀 | 2001年 | ダイエー |
44本塁打 | 岩村 明憲 | 2004年 | ヤクルト |
43本塁打 | 新井 貴浩 | 2005年 | 広島 |
43本塁打 | 山崎 武司 | 2007年 | 楽天 |
40本塁打 | 金本 知憲 | 2005年 | 阪神 |
首位打者に関しても、1990年代から2000年代にかけては、オリックス・イチロー選手が打率.387をマークするなどハイレベルなシーズンも多くありました。
しかい近年では2011年、巨人・長野久義選手が打率.316、2012年には千葉ロッテ・角中勝也選手が打率.312で首位打者に輝くなど、3割打者そのものも減少しており、「投高打低」の傾向は強まっています。
投高打低or投低打高どっちが面白い?
ダルビッシュ有投手vs田中将大投手など、日本でも数々の投手戦がありました。
その一方で、2014年8月5日の阪神vsヤクルトの試合では阪神23安打、ヤクルト16安打が乱れ飛ぶ大乱打戦。20-11という歴史に残る試合となりました。
投手戦と乱打戦…どちらが面白いでしょうか。
「ルーズヴェルト・ゲーム」という言葉があります。
それは第32代アメリカ大統領のフランクリン・ルーズヴェルトが語った「野球は8対7と言うスコアが最も面白い」というもの。
それは乱打戦であり、野球の華であるホームランが飛び出せばなお面白いということでしょう。
投手戦には投手戦の魅力がありますが、それは裏を返せば、打線が打てなさ過ぎるということでもあるのかもしれません。
テレビ中継で観戦する場合は、球筋、配球が良く見えるために、投手戦でも面白いといえます。
しかしスタジアムで観戦するとなれば、やはり乱打戦、とくにホームランの多い試合が盛り上がるのではないでしょうか。
過去リーグを代表する打線の現在は?
投高打低が叫ばれている今、過去には打力を前面に押し出した打線も多くありました。
それには、ニックネームがつくほど。
例えば、
松井秀喜選手や高橋由伸選手、清原和博選手らを擁した巨人のミレニアム打線。
現在の巨人打線は、見る影もなく得点不足に喘いでいます。
福留孝介選手、関川浩一選手らを擁した中日の強竜打線。
80年後半のの立浪和義選手、落合博満選手、宇野勝選手の強竜打線も強力でした!
石井琢朗選手、鈴木尚典選手、ローズ選手らを擁した横浜のマシンガン打線。
現在は、ホームランキング2位の筒香嘉智選手が四番に入り打線を引っ張っていますね!
井口資仁選手、小久保裕紀選手、松中信彦選手、城島健司選手らシーズン30本塁打以上を放った選手が並んだ福岡ダイエーのダイハード打線。
ソフトバンク打線は、現在でも強力な打線を誇っています。
小笠原道大選手、片岡篤史選手、ウィルソン選手ら一発のある打線を形成した日本ハムのビッグバン打線。
さらには防御率はリーグ最低であったにもかかわらず、打力で押し切った大阪近鉄のいてまえ打線。
など様々ありました。
しかし、打線はレギュラーが固定化されても、年齢やチームの離脱などによってメンバーが代わると、打力にもかげりが出てしまいます。
巨人、中日に関しては、強打線は過去のものになりつつあります。
その一方で福岡ソフトバンク、北海道日本ハムに関しては現在に至っても、強打を誇る打線を形成しており、それだけ世代交代が上手く進んでいるといえるでしょう。
統一球導入後の投高打低時代はいつ迄続く?
2010年、プロ野球全体の本塁打数は1605本でした。
しかし、統一球の導入後の2011年には939本と激減しました。
いわゆる「飛ばないボール」になったことで、今までであればフェンスを越えた当たりが、次々とフェンス手前で失速する傾向が強まったのです。
芯をしっかり捕らえないとなかなか本塁打にならないのです。
グラウンドの拡大化やストライクゾーンの広がりなどの要因も考えられますが、統一球の導入が投高打低の傾向を顕著にしたのは間違いありません。
では、これからも投高打低が続くかといえばそうではないでしょう。
統一球になって以降、ヤクルト・バレンティン選手はシーズン60本塁打の記録を作りました。
外国人選手にはあまりボールの違いは関係ないのです。
日本人選手が統一球に適応し、しっかりバットを振り、広角に打てる技術を身に付けていくことで、投高打低の傾向は徐々に緩和していくのではないでしょうか。