広島東洋カープ・福井優也投手は、「ハンカチ王子」の異名をとった日本ハム・斎藤祐樹投手、そして埼玉西武・大石達也投手とともに、当時の早稲田大を引っ張るトリオとして注目された投手。
昨年は巨人キラーとして活躍しましたが、ブレイクというほどの成績を残すことはできませんでした。
果たして7年目の今季はブレイクできるでしょうか?
福井優也投手の経歴・生い立ち
広島・福井優也投手は1988年2月8日生まれの歳、岡山県英田郡西粟倉村出身です。
小学3年の頃にソフトボールを始めた福井投手。
実は中国山地の山間部にあるだけに、冬場はクロスカントリーに夢中になり、なんと全国大会に出場したことも。
福井 優也(ふくい ゆうや)- 広島東洋カープ (2011 – )
生年月日 | 1988年2月8日(歳) |
出身地 | 岡山県英田郡西粟倉村 |
身長 | 178cm |
体重 | 80kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | 済美高〜早稲田大〜 広島2010年 ドラフト1位 |
NPB通算:6年 | 登101(先発:72) 防4.24(28勝30敗)投492.2 振385 |
中学から硬式野球を始め、投手としての野球人生をスタートさせます。
済美高校時代 – (2003 – 2006 )
中学卒業後は愛媛・済美高校に進学し、1年の秋にはエースとなりました。
2年時には創部わずか2年目にして春の選抜に出場、初出場初優勝の立役者ともなります。
同年夏の大会でも準決勝まですべて完投勝利を挙げ、プロからも注目される投手となりました。
高校時代の3年間で3度の甲子園出場を果たし、通算9勝をマーク。
第76回選抜高校野球大会 – (2004 )
回戦 | 対戦校 | 勝敗 | |
一回戦 | 土浦湖北(茨城) | ○ | 9-0 |
二回戦 | 東邦(愛知) | ○ | 1-0 |
準々決勝 | 東北(宮城) | ○ | 7-6 |
準決勝 | 明徳義塾(高知) | ○ | 7-6 |
決勝 | 愛工大名電(愛知) | ○ | 6-5 |
甲子園投手成績 – ( 2004 – 2006 )
年度 | 登板 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 安打 | 三振 | 四死球 | 自責点 |
04春 | 5 | 4勝0敗 | 2.66 | 44.0 | 32 | 43 | 23 | 13 |
04夏 | 5 | 4勝0敗 | 4.00 | 42.1 | 51 | 21 | 30 | 19 |
05夏 | 2 | 1勝1敗 | 5.23 | 10.2 | 10 | 10 | 8 | 6 |
通算 | 12 | 9勝1敗 | 3.53 | 97.0 | 93 | 74 | 61 | 38 |
ドラフト会議 – (2005 )
プロからも注目を集める存在となり、2005年の高校生ドラフト会議で巨人の4位指名を受けるのです。
しかし、福井投手はそれを拒否。
その理由は「順位が低かったから」とか、「やんちゃだったから巨人から断った」などと諸説ありますが真相のほどは分かりません。
高校生ドラフト指名選手 – ( 読売ジャイアンツ )
1巡目 | 辻内 崇伸 | 投手 | 大阪桐蔭高 |
3巡目 | 加登脇 卓真 | 投手 | 北照高 |
4巡目 | 福井 優也 | 内野手 | 済美高 |
巨人25年ぶりフラれた済美・福井が入団拒否
原巨人に衝撃が走った。高校生ドラフト(10月3日)で4巡目指名した福井優也投手(17=愛媛・済美)が5日、仮契約を辞退したと学校側を通じて異例の文書を報道各社に配布した。7日に仮契約する予定だった。福井投手は昨年のセンバツで優勝、夏は準優勝の本格派右腕。巨人はこの日、福井の意志を受け入れ、入団の辞退を了承した。巨人がドラフト指名して入団を拒否されたのは80年4位の瀬戸山満年捕手(中京)以来25年ぶり。まさかの入団拒否。仮契約を目前にして衝撃的な出来事が発覚した。この日、午後5時前に済美高サイドから、父親の署名で異例の文書が届いた。
文面には、甲子園10勝の実績(実際は04年春4勝、夏4勝、05年夏1勝の9勝)に反して、4巡目という低評価の落胆ぶりがにじみ出る内容。10月3日の高校生ドラフトで指名された際は西武涌井との対戦を望むコメントも寄せていたが、この1カ月で気持ちの変化が起きていた。4日には同じ高校生右腕の3巡目加登脇卓真投手(18=北照)が契約金5000万円、年俸540万円(いずれも推定)で仮契約を済ませていた。福井も7日に仮契約を終えるはずだった。事態は急変し、この日巨人は担当スカウトが愛媛・松山市内の同校を訪れ、福井投手と家族、学校関係者と会談。スカウト陣も翻意は難しいと判断した。異例の事態に巨人サイドには衝撃が走った。あるスカウトは、拒否を伝え聞くと「びっくりした。血圧が上がったよ」と話した。スカウトとしては入団拒否となれば、事前の調査不足を指摘されても仕方がない。25年ぶりの巨人入り拒否に、清武球団代表は「担当スカウトが家族を通じて本人の意思を確認しましたが、翻意は難しいという判断だったので契約辞退を了承しました。期待していただけに大変残念ですが、まだ若いし能力もあるので、プロを目指して頑張ってほしい」とコメントを発表した。
早稲田大学時代 – (2007 – 2011 )
その後、1年浪人の末に早稲田大学に進学。
ここで年齢的には1つ下の斎藤祐樹投手、大石達也投手と出会うのです。
斎藤 祐樹(さいとう ゆうき)- 北海道日本ハムファイターズ (2011 – )
早稲田大学投手成績 – ( 2007 – 2010 )
年度 | 登板 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 安打 | 三振 | 四死球 | 自責点 |
07春〜10秋 | 61 | 31勝15敗 | 1.77 | 371.1 | 272 | 323 | 109 | 73 |
大石 達也(おおいし たつや)- 埼玉西武ライオンズ (2011 – )
早稲田大学投手成績 – ( 2007 – 2010 )
年度 | 登板 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 安打 | 三振 | 四死球 | 自責点 |
07春〜10秋 | 60 | 10勝3敗 | 1.63 | 155.0 | 89 | 217 | 46 | 28 |
「ハンカチ王子」で全国的に人気を集めていた斎藤投手、速球派で抑えを任されていた大石投手らが目立つ中、福井投手は「早大トリオ」の中でも最も目立たない存在でした。
しかし、3年の春にシーズン3勝をマークすると、その後もコンスタントに勝利を重ね、東京六大学で通算11勝を挙げました。
大学当時は、152キロのストレートとスライダー、フォークという変化球を交えたピッチングが持ち味。
早稲田大学投手成績 – ( 2007 – 2010 )
年度 | 登板 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 安打 | 三振 | 四死球 | 自責点 |
07春〜10秋 | 35 | 11勝3敗 | 2.57 | 136.2 | 103 | 144 | 57 | 39 |
ドラフト会議 – (2010 )
プロからもさらに注目されるようになり、2010年のドラフト会議で広島が1位指名し入団する事になったのです。
ドラフト指名選手 – ( 福岡ソフトバンクホークス )
1位 | 福井 優也 | 投手 | 早稲田大学 |
2位 | 中村 恭平 | 投手 | 富士大学 |
3位 | 岩見 優輝 | 投手 | 大阪ガス |
4位 | 金丸 将也 | 投手 | 東海理化 |
5位 | 磯村 嘉孝 | 捕手 | 中京大学附属中京高 |
6位 | 中崎 翔太 | 投手 | 日南学園高 |
7位 | 弦本 悠希 | 投手 | 徳島インディゴソックス |
結婚は?
当時の早稲田大監督は福井投手について、最も繊細でプロ向きな性格と語っていました。
そんな福井投手はまだ独身。
家族には2人のお兄さんがいて、かつては2人とも野球をしていました。
福井投手が野球をするようになったのも、2人のお兄さんの影響が大きかったのでしょう。
しかし、2人目のお兄さんは、福井投手がプロ入りした翌年に交通事故で他界。
その時はお立ち台で涙を流すほど。
実は涙もろく、繊細で、それでいて闘志あふれており、実に人間くさい性格の持ち主なのです。
事故死の兄にささげる…福井、涙の2勝目
プロ野球 セ・リーグ 広島3-2横浜(5月3日 マツダ)
どうしても勝ちたい理由があった。そしてつかんだ白星。重圧から解放された広島のルーキー福井は、お立ち台で声を震わせた。「絶対に勝ちたかった。(勝利は)天国のお兄ちゃんにささげたい。泣かないように決めていたけど…」。次兄の龍一さんが、4月20日に25歳の若さで交通事故で他界した。先発を務めた4月24日のヤクルト戦(マツダ)後に訃報を知らされた福井は、28日に岡山県西粟倉村の実家で執り行われた葬儀と告別式に参列。棺にはプロ初勝利の記念Tシャツを納めて最後の別れを告げた。
そしてこの日。「兄が左投手だったので、しっかり投げるよと気持ちが伝わるように」。マウンドのプレートに左手をそっと置いてから、試合に臨んだ。帽子のつばの裏には和真、龍一、優也の3兄弟の名前を1字ずつ取って「和龍優」と書き込んで一緒に戦った。初回2死一、二塁のピンチでハーパーを空振り三振に斬って勢いに乗った。2回から5回まで3者凡退。気迫がこもったマウンドで直球とスライダー主体の投球で、6回2/3を3安打1失点と好投した。03年夏に沖縄尚学で甲子園に出場した龍一さんは、福井にとって目標でありライバルだった。その兄にささげた大切な1勝。「まだまだ勝ち続けます。いつまでも3兄弟でありたいです」。悲しみを乗り越えてプロ2勝目を手にした右腕は、成長する姿と多くの勝利を天国の兄へ届ける。
福井優也投手・プロ入り後の活躍
ルーキーイヤー – ( 2011 )
1年目から先発ローテーションに入った福井投手は、プロ初登板初先発となった巨人戦で7回2失点で初勝利を飾りました。
その年、ルーキーながら8勝をマーク。
年度別投手成績 – (2011)
2010年 (22歳) 広島カープ1位 契約金1億円
年度 | 登板 | 防御率 | 勝敗 | 投球回 | 三振 | 年俸 |
2011年(23) | 27(先発27) | 4.12 | 8勝10敗 | 146.1 | 120 | 1500万 |
2年目〜 – ( 2012 – 2014 )
翌年からは更なる活躍が期待されましたが、思うような結果が残せず、3年目には中継ぎに回る時期もありました。
年度別投手成績 – (2012 – 2014)
年度 | 登板 | 防御率 | 勝敗 | 投球回 | 三振 | 年俸 |
2012年(24) | 17(先発10) | 4.30 | 2勝3敗 | 58.2 | 53 | 2700万 |
2013年(25) | 12(先発1) | 8.69 | 0勝2敗 | 19.2 | 14 | 2400万 |
2014年(26) | 11(先発11) | 4.35 | 4勝5敗 | 60.0 | 36 | 2200万 |
先発ローテの軸へ – ( 2015 )
そんな福井投手が復活を果たしたのは2015年のこと。
自身最多の9勝をマークしたのです。
強気のピッチングがよみがえったことが復活の理由となったのでしょう。
ストレートと切れ味の鋭いフォークを武器にしたピッチングスタイルですが、コントロールには、まだまだ課題があります。
年度別投手成績 – (2015)
年度 | 登板 | 防御率 | 勝敗 | 投球回 | 三振 | 年俸 |
2015年(27) | 21(先発21) | 3.56 | 9勝6敗 | 131.1 | 99 | 2200万 |
巨人キラーとして – ( 2016 )
昨年は5勝どまりですが・・・
年度別投手成績 – ( 2016 )
年度 | 登板 | 防御率 | 勝敗 | 投球回 | 三振 | 年俸 |
2016年(28) | 13(先発13) | 4.34 | 5勝4敗 | 76.2 | 63 | 3900万 |
NPB通算:4年 | 101(先発72) | 4.24 | 28勝30敗 | 492.2 | 385 | 4100万 |
その年のシーズンで2位に終わった巨人を相手に、ここ一番の重要な試合で巨人エース・菅野投手と投げあい、2つの勝利を奪いました。
要所で2位を相手に通算3勝を挙げ、Gキラーぶりを見せ付けました。
ルーキー時代にプロ初登板初先発初勝利を飾っている相手だけに、その頃からGキラーの素養があったのかもしれません。
巨人戦・通算成績 ( – 2016 )
防御率 | 勝敗 |
2.41 | 8勝2敗 |
2017年シーズン・巨人キラーで覚醒か!?
チームとしては先発ローテーションに入って、シーズンを通じて投げ抜いてほしいという思いは強いようです。
昨年限りで引退した黒田博樹さんの抜けた穴を埋める存在としても期待されています。
もちろん、広島が連覇を実現するためには絶対に倒さなくてはならない巨人を相手に、どんどん対戦させるという起用方法もあるでしょう。
今年は開幕からとはいきませんでしたが、先発ローテーションとしての活躍できる素質は十分にあります。
2017年先発投手陣 – ( 2016年成績 )
選手 | 登板 | 防御率 | 勝 | 敗 | 投球回 | 三振 | WHIP |
野村 祐輔 | 25(先発25) | 2.71 | 16 | 3 | 152.2 | 91 | 1.15 |
ジョンソン | 26(先発26) | 2.13 | 15 | 7 | 180.1 | 141 | 1.13 |
九里 亜蓮 | 27(先発10) | 4.50 | 2 | 2 | 80.0 | 52 | 1.45 |
岡田 明丈 | 18(先発15) | 3.02 | 4 | 3 | 89.1 | 60 | 1.28 |
大瀬良 大地 | 17(先発1) | 3.32 | 3 | 1 | 21.2 | 24 | 0.97 |
福井 優也 | 13(先発13) | 4.34 | 5 | 4 | 76.2 | 63 | 1.49 |
加藤 拓也 | – | – | – | – | – | – | – |
床田 寛樹 | – | – | – | – | – | – | – |
まとめ
「早大トリオ」の中で、最も1軍で結果を残しているのは福井投手でしょう。
通算投手成績 – ( 2011 – 2016)
選手 | 登板 | 防御率 | 勝 | 敗 | S | 投球回 | 三振 | WHIP |
斎藤 祐樹 | 68(先発54) | 4.02 | 14 | 20 | 0 | 307.0 | 180 | 1.59 |
大石 達也 | 100(先発0) | 3.59 | 2 | 6 | 8 | 107.2 | 107 | 1.34 |
福井 優也 | 101(先発72) | 4.24 | 28 | 30 | 0 | 492.2 | 385 | 1.40 |
そして今年は黒田博樹さんの抜けた穴を埋める役割も期待されています。
そろそろ30歳という年齢も見えてきた今季は、2年前にあと少しのところで届かなかった2ケタ勝利を目指すことになるでしょう。
Gキラーぶりを今年も発揮すれば、広島の連覇の可能性も膨らんでくるでしょう。
意外と今年の広島のカギを握る男、それが福井投手なのかもしれません。