即戦力の期待を受けて入団した中日・井領雅貴選手。
しかし過去2年間はまだその期待に沿うような結果を残せていません。
今シーズン、ファンからの期待も高い井領選手はブレイクできるか、過去の経歴とともに注目してみましょう。
井領雅貴選手の経歴・生い立ち
井領雅貴選手は1989年11月4日生まれ、千葉県四街道市出身です。
なんと今時珍しい6人兄弟で、しかもお母さんは新聞販売店で昼夜を問わず働きながら、その上、家事をこなし女手ひとつで育てあげました。
だからこそ井領選手は家族のために早く稼ぎたいという思いが強かったようです。
そんな井領選手はお兄さんの影響で5歳から野球を始めました。
小学校時代はソフトボールに、そして中学からはシニアリーグに入りました。
井領 雅貴(いりょう まさたか) -中日ドラゴンズ (2015 – )
生年月日 | 1989年11月4日(歳) |
出身地 | 千葉県四街道市 |
身長 | 173cm |
体重 | 84kg |
ポジション | 外野手 |
投打 | 右投左打 |
プロ入り | JX-ENEOS〜2014年 中日ドラフト6位 |
2016年成績 | 試13 率.194(31打6安打)本1 点1 盗0 |
桐蔭学園高校時代 – ( 2005 – 2008 )
高校は神奈川県の強豪、桐蔭学園高校に進学。
1年春にはベンチ入りし、その後レギュラーの座をつかみました。
巧みなバッティングコントロールとツボにはまれば長打もある打撃で、2年の頃にはチームの4番を務めるようになりました。
3年夏の甲子園は、県大会5回戦敗退。
県大会4強、関東2回戦が最高成績で甲子園出場実績はありません。
第89回選手権神奈川大会 (2007年)
回戦 | 対戦校 | 勝敗 | |
一回戦 | 生田 | ○ | 6-1 |
二回戦 | 藤沢西 | ○ | 10-1 |
三回戦 | 横須賀総合 | ○ | 19-0 |
四回戦 | 保土ケ谷 | ○ | 15-1 |
五回戦 | 慶応 | ● | 4-6 |
桐蔭学園井領 雅貴選手 特大アーチ再現ならず涙
四回の特大アーチの再現を期待された飛球は、フェンス手前でもうひと伸びできず、中堅手のグラブに吸い込まれた。「まだ5回戦。ここで負けたくなかった」。桐蔭学園の最後の打者になった井領雅貴選手(三年)は、一塁ベースを回ったところで崩れ落ち、人目もはばからずに泣いた。甲子園を目指す精鋭をそろえた桐蔭の中でも、井領選手のスイングスピードは群を抜く。0-3の劣勢で向かった四回、カウント0-3からの内角球を振り抜いた打球は右翼席場外へ消えた。「監督のサインは『待て』だったが、自分が何かを変えたくて思い切りいった」。井領選手の一発が口火になり、桐蔭はこの回一挙4得点。試合をひっくり返した。「あそこまでは良かったのに…」とうめくと、また涙。「あの後、いつでも打てるみたいな雰囲気になって、ボール球に手を出して凡退ばかり。自分でつかんだ流れを自分で手放した気がする」土田恵三郎監督は「君は最後まで、あきらめずにやってくれた」と、うなだれるチームリーダーの背中をたたいて労をねぎらった。
JX-ENEOS – ( 2008 – 2015 )
その打撃力はプロからも注目されましたが、プロ志望届は出さず、社会人JX-ENEOSに入社。
7年間にわたる長い社会人経験を積みます。
その中でも5年目以降は打線の中心としてチームを引っ張り、随所で1発もあるパワーを見せつけます。
外野守備では強肩もアピールし、2年連続で社会人ベストナインにも選出。
JX-ENEOS時代 打撃成績
年度 | 試合 | 打率 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 三振 | 四球 | 出塁率 |
08~14 | 30 | .287 | 101/29 | 4 | 17 | 11 | 10 | .351 |
またアジア大会の日本代表メンバーに選ばれた経験もあります。
国際大会 打撃成績
年度 | 試合 | 打率 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 三振 | 四球 | 出塁率 |
13~14 | 17 | .313 | 48/15 | 0 | 12 | 4 | 4 | .365 |
3拍子揃った野球センスに豊富な経験が評価されて、2014年のドラフト会議で中日が6位指名し、入団したのです。
ドラフト会議 – ( 2015 – 2015 )
▲ 契約金4,000万円、年俸1,000万円、背番号は26。
ドラフト指名選手 – ( 中日ドラゴンズ )
1位 | 野村 亮介 | 投手 | 三菱日立パワーシステムズ横浜 |
2位 | 浜田 智博 | 投手 | 九州産業大学 |
3位 | 友永 翔太 | 外野手 | 日本通運 |
4位 | 石川 駿 | 内野手 | JX-ENEOS |
5位 | 加藤 匠馬 | 捕手 | 青山学院大学 |
6位 | 井領 雅貴 | 外野手 | JX-ENEOS |
7位 | 遠藤 一星 | 内野手 | 東京ガス |
6位 | 山本 雅士 | 投手 | 徳島インディゴソックス |
7位 | 金子 丈 | 投手 | 大阪商業大学 |
プロ入り後は?
即戦力と期待されて入団した井領選手ですが、2年目のシーズンを終え、まだ1軍では戦力となっていない状況が続いています。
ルーキーイヤー – ( 2015 – 2015 )
1年目はわずか9試合の出場にとどまり7打数ノーヒット。
年度別打撃成績 -2015年
2014年(25歳) 中日ドラフト6位 契約金4000円
年度 | 試合数 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 三振 | 年俸 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2015年(26) | 9 | .000(7打数0安打) | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 1000万 |
ウエスタン・リーグ撃成績 -2015年
年度 | 試合数 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 三振 | 出塁率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2015年(26) | 78 | .270(241打数65安打) | 19 | 1 | 0 | 10 | 31 | .321 |
入団2年目 – ( 2016 )
2年目は出場試合数をわずかに伸ばしたものの13試合にとどまりました。
プロ初本塁打をマークしたものの、打率は1割9分4厘と自慢の打撃でアピールできていません。
年度別打撃成績 -2016年
年度 | 試合数 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 三振 | 年俸 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016年(27) | 13 | .194(31打数6安打) | 1 | 1 | 0 | 0 | 7 | 1000万 |
NPB通算:2年 | 24 | .158(38打数6安打) | 1 | 1 | 1 | 0 | 10 | 1000万 |
ウエスタン・リーグ撃成績 -2016年
年度 | 試合数 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 三振 | 出塁率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2015年(26) | 45 | .242(124打数30安打) | 17 | 1 | 1 | 0 | 23 | .288 |
過去2年はプロの壁を乗り越えられなくて苦しんでいるといった状況です。
昨シーズンは2軍でも打率2割4分2厘と、けして満足な数字を残すことはできませんでした。
しかしその中でも2塁打、3塁打を多く放っており、俊足と長打力という潜在能力を随所に見せています。
左でパワーがあるという点では若手の頃の森野選手やまた高橋周平選手といったようなタイプと言えるかもしれません。
2017年は覚醒に期待出来る?
即戦力で入団しながら、2年間、特に1軍で目立った結果を残すことができなかった井領選手。
しかし中日の打撃投手に聞けば、今季の飛躍が非常に楽しみで、覚醒できる選手ナンバーワンとされています。
社会人JX-ENEOSの選手としてプレイしていた時も、1年目、2年目は苦しみましたが、5年目以降で花が開き、プロへの道も開きました。
けしてスタートダッシュがいいわけではありませんが、コツコツと努力を積み重ね伸びていくタイプの選手なのでしょう。
そのためには、ライバルを押しのけていく必要があります。
中日はチームに残留を決めた選手、平田良介選手というレギュラーを担う選手がいます。
大島 洋平(おおしま ようへい) -中日ドラゴンズ (2010 – )
生年月日 | 1985年11月9日(歳) |
出身地 | 愛知県名古屋市緑区 |
身長 | 176cm |
体重 | 74kg |
ポジション | 外野手 |
投打 | 左投左打 |
プロ入り | 日本生命〜2009年 ドラフト5位 |
平田 良介(ひらた りょうすけ) -中日ドラゴンズ (2006 – )
生年月日 | 1988年3月23日(歳) |
出身地 | 大阪府大阪市城東区 |
身長 | 177cm |
体重 | 90kg |
ポジション | 外野手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | 大阪桐蔭〜2005年 高校生ドラフト1巡目 |
またシーズン終盤は4番に座った福田選手や藤井選手もいます。
福田 永将(ふくだ のぶまさ)-中日ドラゴンズ (2007 – )
生年月日 | 1988年7月23日(歳) |
出身地 | 神奈川県横浜市青葉区 |
身長 | 181cm |
体重 | 80kg |
ポジション | 内野手、外野手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | 横浜高〜2006年 中日高校生ドラフト3巡目 |
2016年成績 | 試89(三塁:37/外野:27) 率.267(270打72安打)本10 点37 盗0 |
藤井 淳志(ふじい あつし)-中日ドラゴンズ (2006 – )
生年月日 | 1981年5月20日(歳) |
出身地 | 愛知県豊橋市 |
身長 | 182cm |
体重 | 81kg |
ポジション | 外野手 |
投打 | 右投両打 |
プロ入り | NTT西日本〜2005年 中日大学生・社会人ドラフト3巡目 |
2016年成績 | 試87(外野:56) 率.216(167打36安打)本3 点19 盗0 |
中日の主力選手が多く揃っている外野だけに、ライバルが立ちはだかる壁はけして簡単には乗り越えられません。
しかし、3拍子揃ったその野球センスを試合でも活かせるようになれば、覚醒の期待は十分出来るでしょう。
中日ドラゴンズ打線 (2016年度)
1番 | 大島 洋平 | センター | 試143 率.292(599打数175安打)本3 点27 盗26 |
2番 | 荒木 雅博 | セカンド | 試93 率.246(289打数71安打)本1 点16 盗13 |
3番 | 平田 良介 | ライト | 試118 率.248(416打数103安打)本14 点73 盗4 |
4番 | ビシエド | ファースト | 試119 率.274(416打数114安打)本22 点68 盗1 |
5番 | ナニータ | レフト | 試92 率.299(319打数91安打)本8 点35 盗0 |
6番 | 高橋 周平 | サード | 試75 率.251(255打64安打)本4 点29 盗0 |
7番 | 堂上 直倫 | ショート | 試131 率.254(456打数116安打)本6 点46 盗1 |
8番 | 杉山 翔大 | キャッチャー | 試104 率.260(269打数70安打)本3 点27 盗1 |
9番 | 大野 雄大 | ピッチャー | 登19 防3.54(7勝10敗)投129.2 振85 |
まとめ
女手一つという環境で育ったがゆえに、特にお母さんに恩返ししたいという気持ちは誰よりも強いことでしょう。
その気持ちが井領選手の強いハングリー精神にもつながるのではないでしょうか。
高校、社会人とじっくり経験を積み、じっくり伸びてきた選手だけに、3年目以降をこそ楽しみな選手です。