エース・前田健太投手が大リーグに移籍したことで、
今季への戦力については不安が残っていた広島カープ。
しかし、今シーズンの前半戦、特に交流戦以降、一気にエンジンをかけ、
パリーグ勢に苦戦する他のセリーグ勢を横目に、次々と白星を重ね、独走態勢を築きました。
果たしてその要因は何なのか、そして25年ぶりの優勝なるか、占ってみましょう。
カープ快進撃の原動力は?近年のドラフトが成功?
セリーグの首位を独走するカープ。
チームが一丸となって、次々と白星を重ねているように感じられます。
鈴木誠也選手やルーキーの岡田明丈投手など、若手が次々と1軍の戦力として台頭し、
一方で打線では新井貴浩選手、投手では黒田博樹投手と言った大ベテランが、
チームの精神的支柱となっています。
昨季のカープと異なる点といえば、やはり打線でしょう。
昨季のカープ打線は、チーム打率.246でセリーグでも5位。
しかも、チャンスになかなか打てず、決定力に欠ける側面がありました。
そのため、好投する投手をなかなか援護できず、そのまま敗戦するケースも多々ありました。
2015年度チーム打撃成績
チーム | 打率 | 安打 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 三振 |
ヤクルト | .257 | 1240 | 547 | 107 | 83 | 104 | 909 |
中日 | .253 | 1222 | 434 | 71 | 88 | 114 | 1000 |
DeNA | .249 | 1186 | 488 | 112 | 57 | 137 | 1047 |
阪神 | .247 | 1160 | 446 | 78 | 48 | 138 | 1001 |
広島 | .246 | 1170 | 473 | 105 | 80 | 135 | 1082 |
巨人 | .243 | 1137 | 467 | 98 | 99 | 116 | 974 |
一方で今季のカープ打線は田中広輔選手、菊池涼介選手、丸佳浩選手の上位打線をはじめ、
概ね打線が固定され、しかもそれぞれが次の打者につないでいこうと言う姿勢が見受けられます。
そのことが、チーム打率、打点、盗塁、本塁打と、
セリーグトップの数字をたたき出し、チームそのものを活性化しているのでしょう。
2016年度チーム打撃成績
チーム | 打率 | 安打 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | 犠打 | 三振 |
広島 | .266 | 725 | 350 | 76 | 70 | 50 | 584 |
ヤクルト | .265 | 718 | 339 | 65 | 45 | 37 | 487 |
DeNA | .248 | 649 | 264 | 59 | 33 | 48 | 547 |
中日 | .246 | 650 | 270 | 53 | 29 | 55 | 542 |
巨人 | .245 | 618 | 233 | 61 | 24 | 56 | 484 |
阪神 | .241 | 631 | 258 | 42 | 38 | 34 | 634 |
2016 7/2 試合終了時点
また、近年のドラフトの成功によって、
その若手が1軍の戦力となっていることも要因として挙げられます。
FA(フリーエージェント)や自由枠や逆指名のドラフトによって、
資金力に限りがあるカープは戦力補強面で不利を強いられてきました。
しかし、ドラフト制度が改善されたこと、
そして本来持っているスカウティング力をしっかり発揮し、
長い時間かけて有望な選手を発掘し、今や彼らが1軍で台頭するようになったことで、
気がつけば選手層も厚くなりました。
これもまた今の快進撃を支えていると考えられます。
緒方監督の苦い思い出。90年代後半の広島強力打線でなぜ優勝できなかった?
広島カープは1991年の優勝を最後に、24年にわたって優勝を逃しています。
1996年には2位に8ゲーム差をつける時期がありながら、
巨人の猛追、そして主力選手の故障が相次ぎ、
いわゆる「メイクドラマ」の引き立て役になってしまいました。
当時は、野村謙二郎選手、前田智徳選手、江藤智選手、金本知憲選手、ロペス選手、
そして現監督の緒方孝市選手という豪華な顔ぶれで、
チーム打率.281と打撃力に勝るチームでした。
その強力な打線は「ビッグレッドマシン」と呼ばれたほど。
1996年度打撃成績
打順 | 守備 | 選手 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 盗塁 | OPS |
1 | 右 | 緒方孝市 | .279 | 71 | 23 | 50 | .850 |
2 | 二 | 正田耕三 | .235 | 35 | 2 | 4 | .558 |
3 | 遊 | 野村謙二郎 | .292 | 68 | 12 | 8 | .775 |
4 | 三 | 江藤智 | .314 | 79 | 32 | 8 | 1.047 |
5 | 中 | 前田智徳 | .313 | 65 | 19 | 0 | .885 |
6 | 一 | ロペス | .312 | 109 | 25 | 2 | .881 |
7 | 左 | 金本知憲 | .300 | 72 | 27 | 18 | .951 |
8 | 捕 | 西山秀二 | .314 | 41 | 3 | 4 | .777 |
しかし、その一方で投手力は大きな課題でした。
チーム防御率は4.08とリーグでは4位。
防御率ランキングでは上位10位以内にカープでは山崎健投手の1人のみ。
エースなきチーム状況の中で、打線だけが頼みの綱という状況でした。
しかも打線に故障者が出てしまったことで、一気に首位から転落してしまい、
優勝を逃す結果となりました。
現在のカープ打線には、長打力という点では多少劣っているかもしれませんが、
バランスでは引けを取りません。
何よりも、当時に比べると先発投手陣も比較的揃っており、
中継ぎ、抑えも戦力が整っていることを考えると、
投打のバランスは1990年代以上のものがあるといっても過言ではありません。
広島カープ25年ぶり優勝はの可能性は?
果たして広島カープは25年ぶりの優勝を実現できるでしょうか。
前半戦をぶっちぎりの首位で折り返したカープですが、
ここ20年では前半戦で首位だったチームの優勝の確率は6割ほどと言われています。
前半戦首位だからと言って、楽観視できるものではないのです。
では今季の広島カープはどうかといえば、
優勝の可能性は6割どころではなく、かなり高確率なのではないでしょうか。
目下、セリーグは交流戦で苦戦を強いられた結果、
2位以下がすべて5割を切る借金生活が続いています。
これはカープにとって好材料でしょう。
昨季のセリーグは交流戦後に全球団が借金生活と言う時期がありました。
その中で優勝を果たした東京ヤクルトは76勝65敗2分、貯金11と言う成績でした。
現在、広島カープは昨季の東京ヤクルトの最終的な貯金数を上回っています。
貯金を保てば、つまり、残りの試合を5割で戦っても、
十分に優勝の可能性があるといってもいいでしょう。
過去10年間のセリーグ前半戦首位チームの最終順位
年度 | 前半首位 | 2位のゲーム差 | 最終順位 |
2006 | 中日 | 1.5 | 1 |
2007 | 中日 | 1.0 | 2 |
2008 | 阪神 | 9.5 | 2 |
2009 | 巨人 | 2.5 | 1 |
2010 | 巨人 | 0.5 | 3 |
2011 | ヤクルト | 8.0 | 2 |
2012 | 巨人 | 4.5 | 1 |
2013 | 巨人 | 2.5 | 1 |
2014 | 巨人 | 3.5 | 1 |
2015 | DeNA | 0.5 | 6 |
優勝のための投手、野手のキーマン
25年ぶりの優勝を実現するためのキーマン、
投手ではエースのジョンソン投手であり、守護神の中崎翔太投手が挙げられるでしょう。
出典:http://www.daily.co.jp/
クリス・ジョンソン
生年月日 | 1984年10月14日(31歳) |
出身地 | アメリカ合衆国カリフォルニア州 |
身長 | 193cm |
体重 | 93kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 左投左打 |
今年度成績 2016 7/2時点 | 8勝5敗 防御率2.18 |
出典:http://www.daily.co.jp/
中﨑 翔太(なかざき しょうた)
生年月日 | 1992年8月10日(23歳) |
出身地 | 鹿児島県曽於市 |
身長 | 186cm |
体重 | 96kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投右打 |
今年度成績 2016 7/2時点 | 1勝3敗16セーブ 防御率1.75 |
また野手では丸佳浩選手や4番を打つルナ選手といったところになるでしょう。
出典:http://www.daily.co.jp/
丸 佳浩(まる よしひろ)
生年月日 | 1989年4月11日(27歳) |
出身地 | 千葉県勝浦市 |
身長 | 177cm |
体重 | 90kg |
ポジション | 外野手 |
投打 | 右投左打 |
今年度成績 2016 7/2時点 | 10本塁打50打点.278 |
出典:http://www.daily.co.jp/
エクトル・ルナ
生年月日 | 1980年2月1日(36歳) |
出身地 | ドミニカ共和国 |
身長 | 187cm |
体重 | 99kg |
ポジション | 内野手 |
投打 | 右投右打 |
今年度成績 2016 7/2時点 | 2本塁打18打点.279 |
ただ、チーム一丸で突き進んできたチーム。
しかも今季は新井貴浩選手が2000本安打を達成し、
黒田博樹投手が日米通算200勝に王手をかけています。
チーム内でも盛り上がる要素が多分にあるだけに、
キーマンはチームにいる選手全員という方が正しいかもしれません。