夏の甲子園でチームを優勝に導いた作新学院高校のエース・今井達也投手。
一躍ドラ1候補にのし上がり、埼玉西武が単独1位指名に成功しました。
作新学院といえば、かつての巨人のエース・江川卓さんの母校としても知られていますが、そんな大先輩の背中を追ってどのような活躍を見せるのでしょうか。
今井達也投手の経歴・生い立ち
今井達也投手は1998年5月9日生まれ、栃木県鹿沼市出身です。
ご両親と3兄弟の次男として育ちました。
今井投手は幼少の頃、おじいさんに野球を教えてもらったようで、この夏の甲子園では形見となった遺骨を混ぜたネックレスをつけて、試合に臨んでいました。
今井投手の土台を作ったのはおじいさんだったんですね。
今井 達也(いまい たつや)-埼玉西武ライオンズ (2017 – )
生年月日 | 1993年1月2日(23歳) |
出身地 | 栃木県鹿沼市 |
身長 | 179cm |
体重 | 80kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | 作新学院〜2016年 ドラフト1位 |
球種 | MAX152km カット・スライダー・チェンジ |
そんな今井投手が野球を始めたのは小学校1年の頃。
地元の軟式野球チームに入ったのがきっかけでした。
中学時代には全国大会に出場した経験もあります。
高校は栃木県の名門・作新学院高校に進学。
今井投手在籍時は、3年連続で夏の甲子園に進出しています。
しかしなかなかベンチ入りを果たすことができませんでした。
第96回全国高校野球選手権大会 (2014年)今井投手1年生時の試合結果
回戦 | 対戦校 | 勝敗 | |
二回戦 | 沖縄尚学(沖縄県) | ● | 1-3 |
2年の夏にようやくベンチ入りを果たすことができ、準エースの背番号11をつけることになりました。
第97回全国高校野球選手権大会 (2016年)今井投手2年生時の試合結果
回戦 | 対戦校 | 勝敗 | |
二回戦 | 上田西(長野県) | ○ | 10-6 |
三回戦 | 九州国際大付(福岡県) | ● | 0-2 |
当時はストレートに勢いがあるものの、コントロールがバラバラで、ピッチングが不安定な投手でした。
3年生の春を迎えるまでは背番号18を付ける控え投手だった今井投手。
しかし、その年の夏の高校野球の県予選から急成長。
第98回全国高校野球選手権大会栃木予選 投手成績 防御率2.91
対戦校・回戦 | 投球回数 | 被安打 | 奪三振数 | 与四死球数 | 自責点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
○宇都宮高 先発 | 1回戦 | 4.0 | 0 | 7 | 1 | 0 |
○文星芸付 先発 | 準々決勝 | 9.0 | 7 | 8 | 6 | 4 |
○矢板中央 先発 | 準決勝 | 6.1 | 3 | 13 | 2 | 3 |
○国学院栃木 | 決勝 | 2.1 | 1 | 5 | 0 | 0 |
通算 | 4試合 | 21.2 | 11 | 33 | 9 | 7 |
暑い夏の盛りの甲子園であるにも関わらず、変幻自在の投球で相手を倒し、しかも自分自身が試合の最後まで投げるという見事なピッチング。
決勝戦では自身最速の152キロのストレートを投げ込み、作新学院高校を甲子園制覇へと導きました。
第98回全国高校野球選手権大会 (2016年)今井投手3年生時の試合結果
回戦 | 対戦校 | 勝敗 | |
二回戦 | 尽誠学園(香川県) | ○ | 3-0 |
三回戦 | 花咲徳栄(埼玉県) | ○ | 6-2 |
準々決勝 | 木更津総合(千葉県) | ○ | 3-1 |
準決勝 | 明徳義塾(高知県) | ○ | 10-2 |
決勝 | 北海(北海道) | ○ | 7-1 |
第98回全国高校野球選手権大会 (投手成績)
年度 | 試合 | 防御率 | 投球回 | 被安打 | 三振 | 自責点 |
2016年 | 5 | 1.10 | 41 | 29 | 44 | 5 |
一躍高校生BIG4の仲間入りを果たし、プロからの熱い視線を集め、ドラフト1位候補にのし上がったのです。
そして今年のドラフト会議でドラフト1位で埼玉西武が指名しました。
2016年 ドラフト
1位 | 今井 達也 | 投手 | 作進学院高 |
2位 | 中塚 駿太 | 投手 | 白鴎大 |
3位 | 源田 壮亮 | 内野手 | トヨタ自動車 |
4位 | 鈴木 将平 | 外野手 | 静岡高 |
5位 | 平井 克典 | 投手 | ホンダ鈴鹿 |
6位 | 田村 伊知郎 | 投手 | 立教大学 |
プロ注目の投手へ急上昇した訳は?
高校3年の春まではエースではなかった今井投手。
それが高校3年の夏の甲子園ではあれよあれよと優勝投手にまで上り詰めました。
その背景には今までばらつきのあったコントロールが徐々に安定してきたこと。
そして何よりも最終的には152キロまで伸びたストレート。
これらの要素が重なった結果なのでしょう。
第98回高校野球選手権大会(投手成績) 防御率1.10
対戦校・回戦 | 投球回数 | 被安打 | 奪三振数 | 与四死球数 | 自責点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
○尽誠学園 | 2回戦 | 9.0 | 5 | 13 | 2 | 0 |
○花咲徳栄 | 3回戦 | 9.0 | 6 | 10 | 4 | 2 |
○木更津総合 | 準々決勝 | 9.0 | 6 | 9 | 4 | 1 |
○明徳義塾 | 準決勝 | 5.0 | 5 | 3 | 4 | 1 |
○北海 | 決勝 | 9.0 | 7 | 9 | 3 | 1 |
通算 | 5試合 | 41.0 | 29 | 44 | 17 | 5 |
確かにストレートに伸びがあるという点でプロからも多少注目はされていましたが、今年の夏の甲子園での投球でスカウトの評価は一気に急上昇しました。
夏の甲子園NO・1投手は作新学院・今井/西本聖
夏の甲子園大会は大会7日目を終え出場49校がすべて出揃った。野球評論家の西本聖氏はNO・1投手に最速151キロをマークし初戦で完封勝利を挙げた作新学院(栃木)今井達也(3年、180センチ、72キロ、右投げ)の名前を迷わず挙げた。
-ズバリ、今大会NO・1投手は
西本氏 作新学院の今井君ですね。パーフェクト、完璧です。高校BIG3と呼ばれる3人(横浜・藤平、履正社・寺島、花咲徳栄・高橋昂)と比べても彼が一番いい。
-最速151キロをマークした
西本氏 スピードはもちろんフォームが素晴らしい。投手のチェックポイントは(1)軸足でしっかりと立てるか(2)踏み込んだ足が動かないかどう か(3)テークバックの際に腕が後ろに入りすぎていないか(4)グラブを投げる方向にしっかりと出せているかの4点。このすべてを満たしている。とにかく フォームのバランスが良い。無駄な動きがほとんどない。特に肘のしなりと柔らかさ。左打者のインコースにシュート回転することなく完璧に投げ込めていた。 すごいよね。
-体重が72キロとやや線が細いのでは
西本氏 いやいや、あの細さでも軸がしっかりしている。基本的なことができているから大丈夫。高校生離れしているしプロの一流投手を見ているような感じ。ほれぼれする。
-プロでも通用するか
西本氏 即戦力で使えます。直すところのない文句の付けようがないフォーム。プロでもこれだけのフォームで投げられる投手が何人いるか。久々に見ていて釘付けになる投手を見せてもらった。
それまで高校球界には花咲徳栄高校・高橋昂也投手、横浜高校・藤平尚真投手、履正社高校・寺島成輝投手の三人が高校BIG3と言われていました。
彼らと比べてもストレートの球速は劣らず、しかも変化球のキレがあるという点で、彼らに並ぶ存在であることから、高校BIG4と呼ばれるようになりました。
国際大会 投手成績
年度 | 登板 | 防御率 | 投球回 | 安打 | 三振 | 自責点 |
16(U-18アジア) | 2 | 0.00 | 9.1 | 7 | 6 | 0 |
辻監督からの評価も高く、球団としてはゆっくり育てていき、将来のエース候補として期待されています。
辻 発彦(つじ はつひこ)-監督歴:埼玉西武ライオンズ (2017 – )
生年月日 | 1958年10月24日(57歳) |
出身地 | 佐賀県小城市 |
身長 | 182cm |
体重 | 81kg |
ポジション | 二塁手 |
投打 | 右投左打 |
プロ入り | 日本通運〜1983年 ドラフト2位 |
NPB通算:16年 | 試1562 率.282(5187打数1462安打)本56 点510 盗242 |
開幕ローテ入りの可能性
過去にも今井投手と同じように、即戦力として期待できるほど高校時代に実績を残した投手を指名しています。
例えば菊池雄星投手や高橋光成投手がそれに該当するでしょう。
菊池 雄星(きくち ゆうせい)-埼玉西武ライオンズ (2010 – )
生年月日 | 1991年6月17日(25歳) |
出身地 | 岩手県盛岡市 |
身長 | 184cm |
体重 | 100kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 左投左打 |
プロ入り | 花巻東高〜2009年 ドラフト1位 |
2016年成績 | 登22 防2.58(12勝7敗)投143.0 振127 |
髙橋 光成(たかはし こうな)-埼玉西武ライオンズ (2015 – )
生年月日 | 1997年2月3日(19歳) |
出身地 | 群馬県沼田市 |
身長 | 188cm |
体重 | 90kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投右打 |
プロ入り | 前橋育英高〜2014年 ドラフト1位 |
2016年成績 | 登22 防4.42(4勝11敗)投118.0 振89 |
ドラ1高卒投手といえども1年目の開幕当初からバリバリ一軍で登板していたわけではなく、二軍でまずは体作り、そして実戦での登板を重ねながら徐々にステップアップしていきました。
菊池投手の場合、ルーキーイヤーは左肩の痛めたことで1年目は一軍の登板はありませんでしたが、2年目に4勝を挙げています。
菊池雄星・高橋光成 投手成績
年度 | 選手 | 登板 | 防御率 | 勝 | 敗 | 投球回数 | 三振 |
2011年(2年目) | 菊池 雄星 | 10 | 4.14 | 4 | 1 | 54.1 | 24 |
2015年(1年目) | 高橋 光成 | 8 | 3.07 | 5 | 2 | 44.0 | 22 |
一方で高橋光成投手はシーズン終盤の8月から一軍で登板機会を与えられ、いきなりその月の月間MVPを獲得するという快挙を達成しました。
しかしシーズンの序盤は主に2軍で実戦経験を積んでおりそれが早い段階で花開いたということになります。
辻監督は将来のエース候補にと期待を寄せています。
つまり裏を返せば、菊池雄星投手や高橋光成投手のように、1年目の開幕に照準をあわせて1軍で起用するというよりは、まず2軍でしっかりと体を作り、実戦経験を積むことを優先するという方針になるのではないでしょうか。
開幕ローテ入りの可能性は非常に少ないと感じます。
2016年 西武投手陣
役割 | 選手 | 防御率 | 勝 | 敗 | 投球回数 | 三振 |
先発 | 菊池 雄星 | 2.58 | 12 | 7 | 143.0 | 127 |
先発 | 岸 孝之 | 2.49 | 9 | 7 | 130.1 | 104 |
先発 | 多和田 真三郎 | 4.38 | 7 | 5 | 98.2 | 91 |
先発 | 髙橋 光成 | 4.42 | 4 | 11 | 118.0 | 89 |
先発 | ウルフ | 3.04 | 4 | 0 | 23.2 | 8 |
抑え | 牧田 和久 | 1.60 | 7 | 1 | 78.2 | 43 |
まとめ
今年の夏になって急成長を遂げ、埼玉西武のドラフト1位となった今井投手。
今年の感覚をしっかりつかみ、プロ入り後も、今の状態を維持、もしくはさらに成長を遂げることができるでしょうか。
今年の感覚を忘れることなく、プロの世界でもどんどん羽ばたいていけるか注目されます。